2016年12月9日 我孫子市民プラザにて開催

講師:しもふさ学園理事 島田豊氏 

    《島田豊さん略歴》 

     昭和12627日生 

     富士銀行(現みずほ銀行)支店長を歴任 

     定年退職後 日動火災(現東京海上日動火災)顧問

        社会福祉法人 菜の花会(しもふさ学園、しもふさ工房、アーアンドディ-だいえい)の運営法人の理事。

     現在に至る  

■自己紹介 

来年80歳になる。自閉症で「しもふさ学園」に入所している長男も45歳になる。

■親は何に悩んでいるか?

 学園利用者が先日癌で亡くなった時に、その子の母親が「ホットした顔」をしていることが印象的だった。そのことをある方に伝えたら、非難されたこともあったが、「親は障がいを持っている子どもより先に死にたくない。一日でも長生きしたい・・」という思いをもっていることも事実かと思う。これは、そうした子どもを持たなければ分からない気持かもしれない。その母親は、お別れの時に「しもふさ学園に入ってよかった。職員の方が見送ってくれる・・」と心境を話された。

■やまゆり学園のこと

亡くなった親から、名前を出さないで欲しいという意見が出た一方、「子どもには人権があるから出すべきという声もあった。それは正常な子をもった親の思いではないか?

千葉県入所施設連絡会?から、障がいをもつ両親対象にアンケートがあった。「名前を出すべき」「出さない」45か所からの回答は、半々であった。「出さない」という思いの方の中には、「哀れで亡くなったことを世間に出せない。みっともない。恥ずかしくて話せない・・云々」という心情があったと思われる。個人的には「その身になってみなければ分からない。哀れじゃないですか・・」という思いだ。

■障害告知と親の気持ち

■情報収集・・千葉県自閉症児者親の会

■妻の苦悩(幼・小学生時)と成長の姿を見て、父親として自分は何をしなければならないかに目覚めることが出来た。

■このことがあって、子供の障がいについてカミングアウトすることが出来た。

「住居を変えることは出来ない」ことを、支店長に伝えた。同僚は理解し肩をたたいて励ましてくれ、おかげで、15か所の支店を回って仕事を終えることが出来た。

■「家族だけでは育てることはできない」という思いから、施設作りに奔走。

「しもふさ学園」を昭和63年創立したが、色々な危機的な状況があった。職員ついには施設長までが退職していき、学園の運営の継続が難しい中で、自ら宿直に入ったり、学校を回って職員集めをしたりという時期もあった。

■発想の転換・・施設職員には「感謝・感動・感激」という新たな3Kを提供し福祉施設が魅力があるようにしていくことが課題だと思った。

■施設を選ぶとき「愛を込めてよく見てほしい!」と言いたい。運営はソフトが肝心。

県内でも魅力的な施設が複数ある。市原市「ふるさと学舎」、松戸市「まつぽっくり」、瑳市「しおさいホーム」(知的障がい者が老化していくことに対応等)

建物だげではなく、様々な視点から見ることが大切である。

■施設でできること・・

「しもふさ学園」では成人病検査がある。施設ではうまくコントロールされている生活も、家庭に帰ると「こだわり」に振り回されて崩れることがある。週末に自宅に帰る途中のコンビニを全て回り、買い込んだものを全て食べるというこだわりを見せる人もある。

年末年始、両親が他界して、自宅に帰れないという人もいて、そのような人をハワイアンセンターに連れていく!という企画を立て、実行してきた。企画した施設長、協力する職員に感動した。

■成年後見制度があっても・・(手続き参考資料参照)

制度があることにより、財産を守ることは出来る。・・親が死ぬと残ったお金は「国庫」に入る。生きている間に活用していくこと、学園ではそうした親の財産を運営に活用して様々な取り組みを展開してきている。

また、それだけでカバーできないところに対して、しもふさ学園では「母親に近い心情把握が出来る“疑似親”的な役割」を担ってくれる人がいてくれたら・・という親の気持ちをかなえてくれる独自の制度を作った。

学園では、職員同士の結婚もあるので、一月に1回でもそうした職員のパートナーの協力を得て、“疑似親”的なこと(気に入った服を買いに行くなど)に協力してもらっている。

■きょうだいのこと

障害を持つ子どもと親の関係は当事者同士の問題。しかし“きょうだい“はある意味被害者かもしれない。”きょうだい“に将来を託すということについては、年月をかけて関係を作りあげていくことが必要と思う。

■その他

・グループホームや支援者に対して親が出来ることは「感謝すること」「働く職員の地位を上げること」。協力することは、“ほめること”うるさく言うのではなく、出来ることはさりげなく手伝うということを伝えること

・職員の教育にお金をかけること

・障がいをもつ人に対して、世間が「役立たない・・」という見方もあることを知る。

・障がいがあるからと甘えてはいけない。

・手のかかる方の子どもに関らざるを得ない時期があるが、他の兄弟にも平等に接することが大切。

・以前、永六輔さんの講演会を開催した時に、「暗い表情をしている・・」と言われたことがある。もっと、自分たちのことを、社会に発信していくことが必要で、子どもたちのことを理解してもらう努力が必要。「情報公開をもっとしていきながら、色々な人がいることをいることを発信すること、私たちにも責任はある!」

・本当に大切なのは、父親。両親で情報を共有すること。親が対立することを見るのは、子どもにとっても辛いこと。仲良い関係でいくことが、子どもによい影響を与える。いつかきょうだいは、親の思いに気づくことがある!という気持ちでいること。

・親は健康でいること!6年前に胃がんの手術をして3分の2を切除したが、毎日一万歩、

腕立て伏せ70回、青竹踏みを300回続けて健康管理をしている。

       

【 質問応答 】

Q1、きょうだいのことについて

・「小さい頃からあなたはお兄ちゃん(お姉ちゃん)だから我慢させる。そのうえ、みなしヘルパー的な役割を担ってきたきょうだいもいるが、小さい頃からどんなことを積み上げきいったらいいか?」

➡A 保護者から

 姉妹は同じ学校で学んできた。小さい頃には、恥ずかしいと思われる言動についてもあったようだが、親はあまり深刻にならないでさりげなく聞き、親からのメッセージを伝えるようにしてきた。きょうだいの性格によっても対応は異なると思うが、現在上の子は大学生になり、少しずつ障がいのことを理解し広まっていければと発信しているようだ。

Q2、親が集まって施設を創っていきたいという思いがあって、「いいものを創りたい」という共通の願いがあっても、意見が対立していくという現実があるがどのようにしていくといいか?

➡A島田さん

同じ考え方ということはないので、そのような場合は、信頼のおける「リーダー」の存在があることで、差異は消えていくと思う。

Q3、施設入所のタイミングについて。また入所までどんなことを心がけていけばいいか?

➡A島田さん

タイミングはそれぞれ異なると思うが、我が子は高等部を中退して入所した。施設に入所するのは、「捨てっぱなし」にすることではない。2週間に1回帰宅して、年に一回は親戚とも一緒に旅行に出かけている。年をとってからでは難しい、余力をもって新しい環境に適応できるようにすることが大切。

                              以上

 

               

感想集

 ☆障害を持つ我が子も高校生になり、この子の将来を考えて、色々と勉強会に参加してはいますが、何だかいつも難しい言葉を使った遠い話の様な‥。今ひとつ私が聞きたい話とは少し違うけれども、こんなものなのかなぁ~と感じていました。 

今回の島田さんのお話は、今まで聞いたどの話よりも、本当に私の心に1番近い、1番響くお話をして頂いたと感じています。きっと、島田さんの長年の経験と、障害のある子供を持った親にしかわからない、正直な心の中のお話をして頂いたからだと思います。 

我が子が、親なき後も幸せな生活が送れるように‥。それは中々難しい事かも知れませんが、諦めずに考えて行きたいと思いました。島田さんにお会いして、健康で元気に年を重ねて行く!私の目標ができました。     

高校一年生 自閉症の息子の母  

 ご子息が高等部を卒業する前に施設を立ち上げられた行動力、運営上の危機を乗り越えた辛抱強さに敬服致します。私は話し始めたらいつまでも話してしまうと仰られていましたが(笑)、島田さんのそのコミュニケーション力こそ、存続の秘訣なのだろうと拝察致しました。優秀な職員あっての施設とのお話しでしたが、職員として働く人が意欲を持ち、試行錯誤をし、成長することができる場だからこそ、その人の内の優秀さが発揮されているのでしょう。場は、「コミュニケーション」によって醸成されるのだと思います。    擬似親というアイデアは、とても素晴らしいですね。仰るように、成年後見制度では全くカバーされない部分。しかし、QOLを考える時に、節約だけではない部分、尊厳に関わる部分を守る存在が、親亡き後にもいて欲しいとずっと願ってきました。このアイデアが形になっていくことを願います。

  1日一万歩、腹筋300回、青竹踏み100回…でしたでしょうか?健康維持への努力にも刺激を受けました。私も息子が60歳になる88歳までは元気でいたいと思っています。日々のことに追われ、アドレナリンが切れるとたちまち体調を崩す現状を打破し、元気なおばあちゃんになれるよう、頑張ります!

  今回は講演を聴かせていただくまでしかいられず、茶話会に参加できなかったのが残念でした。高等部を卒業してしまうとなかなかそんな機会もなくなってしまうのではと思っています。はとの会のような集まりは、貴重な場になっていくのではないかと思っています。お誘いいただき、ありがとうございました。

 高等部2年生の男子の母

☆以前、娘さんである島田律子さんの著書を拝読し、兄弟時の気持ちのゆれ動きを率直に語っていらっしゃった内容に深い感銘を受けました。今回お父様である島田さまの講演会ということで、ぜひ拝聴したいと、茨城県から参加致しました。まず島田さまの若々しさと、語りの明晰さに感動しました。障害を持つ子を育てている私たち親もいずれ年老いていきます。しかし心がけ次第でほんとに変わるものなんだ!と勇気づけられました。

 お話の内容では、苦労して親同士で障害者施設を立ち上げられ、とにかくそこで働く『人』が大切なんだ、ということ。また職員の教育、研修の重要性を強調されていたことが印象に残りました。さらに福祉現場で働く方たちの待遇や地位を上げていきたいと熱く話されていて共感しました。

 しもふさ学園立ち上げの頃は、今より制度の面でも、世間の考え方の点でも困難の連続であったと想像します。島田さまのような志をもち続けることは生半可なことではなかったと思います。このような人生の先輩のお話を直接お聞きして、これからの子育てに生かしていきたいと気持ちをあらたにした一日でした。貴重なお話をどうもありがとうございました。   高校生の自閉症児女子を持つ親より  

「☆講演を聴かせていただきまして、ありがとうございました。 お父様ならではの視点や、お考えがよくわかり、率直で真摯に向き合っているお姿が伝わってきました。通所施設や、グループホームなど各所に詳しくておられてそこの職員様との関わり方も、勉強になりました。

つらかったはずの子育てを、明るく語られる姿に励まされました。お姉さまが明るいのも、お父様である島田様譲りの長所ですね。私も是非見習いたいと思いました。   作業所に通う二十歳の息子の母より。」

☆島田先生の講演会に参加させて頂き、はとの会の 皆様 本当にありがとうございました。

島田先生のお嬢様の書かれた本は、出版当初に、自閉症の方のお姉様が書かれた本とうことで、とても興味深く読ませて頂きました。まだその頃は、私の自閉症の息子は幼稚園児だったでしょうか…

そんな訳で、その方のお父様の講演会ということで、ぜひぜひ参加させてもらいたいと強く思いました。

島田先生のお話し…最初から泣いてしまいました。子供が先に逝ってしまうなんて普通なら望みません。だけど障害を持つ子供だったら心配で先立てません。私が息子を産んだのが31才だから、私が100才まで元気で生きられたら、息子が70才になったら一緒に逝けたらいいな…なんて考える時があります。私はまだ今は元気だから、ただ漠然とこんなことを考えますが現実には、どうだろう…?まだ、時間がたっぷりある今のうちに今後の事をもっと切実に考えていこうと思いました。

 私は、兄弟児のことでも悩んでいます。島田先生のお言葉、胸に刺さりました。お兄ちゃんの療育が大変で弟はおばあちゃんに預けて…それが将来の為だと信じて お兄ちゃんに一生懸命になっていた事など、私の言い訳だと思いました。両親が協力しあい仲良くすること、こんな当たり前のことも見えなくなっていたかもしれません。

 島田先生がおっしゃった事を帰宅してから主人と話しました。島田先生のお言葉を信じて、下の息子の心が、再び戻って来てくれるまで、ずっとずっと待っていようと思います。そして、戻って来た時、島田先生に報告出来れば嬉しいです。ありがとうございました。感謝の気持ちで一杯です。  

 二十歳の自閉症児の母 

 ☆前回に続き、今回も島田さんの講演会に参加させていただきました。

2015年の5月には、しもふさ学園の見学会にも行かせて頂き、丁寧に案内していただきました。)

 親の愛と職員の愛が大切なことを、強く感じる事が出来ました。

障がいを持って生まれた息子の親として、何をしなければいけないのか?

 又、兄弟姉妹に対しての大切なことは?など、人生の先輩として、沢山のアドバイスを頂けた気持ちでいっぱいです。

 新年を迎えるにあたり、息子が幸せに感じる時間を増やせるように、家族で話し合おうと思います。

 親の気持ちを成長させてくれる言葉の数々、島田さんに心から感謝致します。ありがとうございました。

 次回の講演会を楽しみにしております。   20歳の息子の母より

☆島田さんのお話にグイグイ引き込まれ、時間があっという間に過ぎていきました。先輩保護者の経験談にとどまらず施設の運営側の生の声も聞かせて頂き、障害をもつ子供の親としてこれから何をしていくべきか道しるべをつけていただいたような気がします。将来の住まい、財産管理、生活の質など、考えなければならないことは沢山あります。子供がお世話になっている職員の方々に感謝の心を持ちつづけることが何よりも大事だと、改めて島田さんから教えていただきました。

今回の講演会に参加させて頂きありがとうございました。   18歳自閉症男子の保護者

 ご感想をいただきました皆様、ありがとうございました。 私もウンウンと頷きながら読ませていただきました!  安部記